第1章

肺が海水で満たされる最後の瞬間、助け出されたあの小さな女の子の泣き声がまだ聞こえていた。

そして、すべてが終わった。

――いや、むしろ、すべてが始まった。

「なっ……!?」

がばりと起き上がると、そこはまったく見知らぬ場所だった。目の前には色とりどりの石畳の広場が広がり、そこにいるのは……骸骨?

待って、この骸骨たち、踊っている!

歌い踊る色鮮やかな骸骨たちを、私は呆然と見つめた。彼らは豪華な伝統衣装をまとい、頭には花の冠を載せ、骨にはピンクや青、金色の美しい模様が描かれている。雷鳴のような音楽が鳴り響く中、一体の骸骨が私に近づいてきた。

「ようこそ、同胞――死者の国へ!」

その骸骨は陽気に手を振り、骨張った指にはめられた銀の指輪がキラリと光った。

とっさに自分の顔に手を伸ばし、その感触に全身が凍りついた。

骨。硬くて、確かな骨の感触。

「ありえない……」頬骨に触れながら、私は震えた。「ついさっきまで、あの小さな女の子を助けて……生きていたはずなのに……」

「ああ、新入りさんはいつもそんな反応さ」

つばの広い帽子をかぶった骸骨が歩み寄ってきた。その眼窩では、オレンジ色の光が優しく揺らめいている。

「俺はミゲル、ここの案内人だ。どうやら……説明が必要みたいだな?」

私は必死に頷いた。自分の世界観が根底から崩れ去っていくのを感じる。私、死んだの? 本当に?

「簡単な話さ、嬢ちゃん」ミゲルさんは骨ばった肩をすくめた。「あんたは死んだ。死者の国へようこそ! ここでは古くからのルールに従う――記憶片コインで取引をし、マリーゴールドの花弁の橋は生者の世界に便りを届けられる。そして、あんたは……」彼は私を上から下まで眺め、「何か、面白い過去を持っていそうな顔をしてるな」

「記憶片コイン? マリーゴールドの花弁の橋?」私は自分を落ち着かせようと努めながら、マーケティング専門家としての本能で情報を集め始めた。「具体的には、どういう仕組みなんですか?」

「記憶のコインは、生者がお前さんのことを思うことで形作られる金貨だ」ミゲルさんは遠くの屋台を指差した。「あそこの夫婦が見えるか? 彼らは今、生きている息子に便りを送るために花束を買ったところさ」

彼の視線を追うと、マリーゴールドを選んでいる骸骨の夫婦がいた。奇妙なことに、二人は少なくとも半メートルは距離を保っている。男性の骸骨が女性に花を渡そうとするときも、まず咳払いで合図を送り、彼女は彼の指に触れないよう慎重にそれを受け取っていた。

「あの二人……夫婦なんですか?」

不思議に思って問いかけると、

「もちろんだとも! 三十年になる!」

ミゲル様は胸を張って笑った。

「見ろよ、なんて愛情深いんだ。――はしたないと思われたくなくて、手を取るのさえあんなに慎重なんだぜ」

私は信じられない思いで二人を見つめた。現代社会での生活が長かった私にとって、こんな……奥手な夫婦は見たことがなかった。

その後の数時間、ミゲルさんは骸骨の広場全体を案内してくれた。そこでわかったのは、ここの骸骨たちは実に魅力的だということ――温かくもてなし好きで、音楽と踊りを愛している。だが、感情表現においては、異常なほど控えめだった。

明らかにデート中の若い骸骨の夫婦はずっと紳士的な距離を保ち、泣いている妻を慰めたい夫はなすすべもなく近くでティッシュを差し出すだけ。ハグでさえ、まず許可を求め、ほんの一瞬触れただけですぐに離れる始末だ。

この人たち……いや、骸骨たちは……感情を表現することに、何らかの壁があるように見えた。

広告代理店で働いていたマーケティング専門家として、私の職業的本能がうずいた。

ここに、市場の空白がある。

それが具体的に何なのかはまだわからなかったが、この世界には何かが欠けていると、私の直感が告げていた。この愛すべき骸骨たちが、もっとうまく感情を表現し、互いの関係を深める手助けとなる、何かだ。

「ミゲルさん、ここでは起業のチャンスはありますか?」私はおそるおそる尋ねた。「例えば……小さなお店を開くとか?」

「もちろんだとも!」ミゲルさんの眼窩の光が輝いた。「何かアイデアがあるのかい?」

「まだ……様子を見ている段階です」私は正直に答えた。「でも、先に店舗を借りて、やりながら考えていこうかと」

ミゲルさんは私を静かな通りに連れて行き、空き店舗を指差した。「ここが空いてるぜ。家主のカルメンは優しいおばあさんで、家賃も良心的だよ」

骸骨のポケットを探ると、金色の欠片がいくつか見つかった。どうやら、カルロス・ロドリゲスが私を思う気持ちが、すでにこの世界の通貨に変換され始めているらしい。最先端のIT現場でコードを書いては食事を忘れる、あの二十六歳のプログラマーの恋人は、きっと私を失って苦しんでいるに違いない。

「ここにします」私は決めた。

三時間後、私は薄暗い小さな店の中で、空っぽの棚を前に途方に暮れていた。

店の名前は『情熱の庭』にした。その名前を聞いてカルメンは顔を赤らめたが、私は押し通した。

問題は、具体的に何を売るべきか、だった。

空っぽの店の中を歩き回りながら、今日一日の光景を思い返す。慎重すぎるハグを交わす骸骨の夫婦たち、手を繋ぐのにも許可を求める恋人たち……。

――待って!

私は突然立ち止まり、目を輝かせた。

現代社会で生きてきた女性として、カップルが親密さを深め、心理的な壁を乗り越える手助けとなるものを、私はよく知っていた。生者の世界では、こうした問題を解決するための巨大な産業が存在するのだ!

アダルトグッズ!

そのアイデアは、雷に打たれたような衝撃だった。ここの骸骨たちは愛情がないわけじゃない――ただ、伝統的な制約をどう打ち破り、愛情や親密さをもっとうまく表現すればいいのか知らないだけなのだ。

それに、もしマリーゴールドの花弁の橋が生者の世界に便りを届けられるなら、物を転送することもできるんじゃないか?

私は店の裏にある小さな庭へ駆け出した。そこには青々と茂るマリーゴールドの茂みがあった。慎重に花びらを一枚摘み取り、目を閉じてカルロスのことを想う。

「カルロス……」私は花びらに囁いた。眼窩の緑の光が、ひときわ強く輝く。「ちょっと頭おかしく聞こえるかもしれないけど、、私は死んだの。でも、別の世界で存在している」

私は深呼吸し、すべてを賭ける覚悟を決めた。

「アダルトグッズよ、カルロス。セックスショップに行って、いくつか品物を買って、私の供物台に置いてほしいの。私、こっちでお店を開いたんだけど、ここの骸骨たちは奥手すぎて――関係を深めるために、こういう物が必要なの。お願い、私を信じて」

花びらは私の手の中で光を放ち始め、やがてゆっくりと消えていった。

カルロスがこのあまりに突拍子もない頼みを信じてくれるかどうか、私は神経質に待った。

彼は私が狂ってしまったと思うだろうか?

死んだ恋人の、こんな馬鹿げた事業計画を、手伝ってくれるだろうか?

そして何より――この計画は、本当に成功するのだろうか?

がらんとした店を見つめ、私は拳を握りしめた。何があろうと、私、エレナ・メンデスは、そう簡単に諦める女じゃない。

たとえ死んだって。

夜が訪れ、死者の国の通りにはマリーゴールドの形をした街灯が灯り始めた。私は店の入り口に座り、眼窩の緑の光が、遠くを見つめていた。

生者の世界のどこかで、カルロスは私のメッセージを受け取ってくれるだろうか?

この突拍子もない次元を超えた事業計画は、本当にうまくいくのだろうか?

遠くから、骸骨たちの歌う古いラブバラードが聞こえてくる。それを聞きながら、私は決意の笑みを浮かべた。

もし死が終わりだというのなら、私、エレナ・メンデスは、その終わりの中にまったく新しい始まりを創り出してみせる。

死者の国へようこそ――私のビジネス帝国は、ここから船出するのだ。

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