第110章

沈川澪は彼女に引っぱられてよろめき、眉をひそめた。涼やかな瞳に驚きの色がよぎる。

「どうしたの」

「お兄ちゃんが……さっき書斎で、お爺様に離婚のこと話しちゃったの!」藤原瑶は目を真っ赤にしている。「お爺様が激怒して、折檻してるの。早く来て! このままじゃ本当に死んじゃう!」

沈川澪の足がぴたりと止まった。

藤原司から自ら離婚を切り出すとは、思いもよらなかった。

彼女は藤原瑶に手を引かれるまま、落ち着いた足取りで二階へ上がり、書斎の前にたどり着く。

少し開いていたマホガニーの両開き扉を押し開けると、むっとするような血の匂いが鼻をついた。

藤原司は入り口に背を向け、書斎の中央に敷か...

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