第19章

沈川澪は一瞬呆けたが、すぐに慌てて頷いた。

「絶対にしません」

二人はさらに二、三言葉を交わした。藤原雅臣が腕時計に目を落とす。まだ急ぎの用件が残っているようだった。

エレベーターホールまで見送り、ゆっくりと閉まる扉がその安心感のある視線を遮るのを見届けてから、沈川澪はふうっと長く息を吐き、きびすを返した。

振り返った途端、佐伯に手首を掴まれた。まだ血の滲む傷口を見て、彼女は今にも泣き出しそうに焦っている。

「なんてひどい怪我! こんなに血が出て! 早く、早くお医者様に診てもらいましょう!」

佐伯は有無を言わさず沈川澪を救急外来へ引っ張っていった。傷口を見た医師もぎょっとした様子...

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