第35章

足の裏を擦る細かい砂の痛みなど構っていられなかった。彼女は身を翻し、影の落ちるヤシの林へよろめきながら逃げ込んだ。

そのとき、焚き火のそばにいた藤原司は何かを感じ取ったように、鋭い視線を少し離れた木立の影へ向けた。

「司、何を見てるの?」

朝倉月乃の甘ったるい声が耳元で響く。彼女は一口かじった和牛の串を握りしめたまま、冷ややかな目で遠くを見つめる藤原司の横顔を見て、なぜか胸の奥がざわついた。

藤原司は視線を戻したが、瞳の奥の苛立ちはさらに濃くなっていた。たった今、華奢な後ろ姿が一瞬だけ見えた。あのゆったりとした白いシャツワンピースは、どう見ても沈川澪だった。

「別に」冷たく言い放ち...

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