第53章

神崎湊を見送った沈川澪はドアを閉め、振り返って玄関に置かれた上品な紙袋を見つめた。藤原司によって泥水のように濁りきっていた彼女の心に、まるで清らかな小石が投げ込まれたかのように、さざ波が静かに広がっていく。

人と人との間には、これほどまでに純粋で、何の重圧も伴わない気遣いが本当に存在するものなのだ。

弁当箱を開け、あっさりとしつつも胃に優しい料理を少しずつ口に運ぶ。連日の重苦しい陰鬱さも、この思いがけない温もりによっていくらか晴れていくようだった。

一方、島の反対側にある臨時会議室では、絞れば水が滴りそうなほど重苦しい空気が漂っていた。

上座に座る藤原司は、金髪碧眼の海外クライアント...

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