第57章

オーダーメイドのジャケットはどこへやったのか、シャツ一枚の姿だった。袖口がわずかに捲り上げられ、引き締まった逞しい前腕が覗いている。その顔は水が滴り落ちそうなほど陰鬱に沈み、眼底にはぞっとするような血走った赤みが広がっていた。まるで修羅場から抜け出してきたばかりのような、凄まじい殺気を全身から放っている。

彼は沈川澪の前に立ち、一言も発しない。その氷のように冷たい瞳でまずエレベーターの方向を一瞥し、次いで沈川澪の蒼白な顔を射抜くように見据えた。

「話は済んだか」

藤原司の薄い唇から紡がれた言葉は、氷の刃のように鋭かった。

大股で歩み寄ると、有無を言わさず沈川澪の隣に立つ。そして、少し...

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