第68章

沈川澪は振り返った。

廊下の突き当たりの角に、いつの間にか藤原司が立っていた。

上質な黒のコートを羽織り、片手をポケットに突っ込んだまま、長い脚でゆっくりと近づいてくる。

その深い瞳には値踏みするような色が浮かび、彼自身すら気づいていない微かな称賛が混じっていた。

「藤原の奥様は、この手の処理が相変わらず見事だな」藤原司は彼女の目の前で立ち止まり、見下ろすようにして言った。その口調には、あるかなきかの賛辞が滲んでいる。

実は、彼は最初から後をつけていたのだ。彼女が冷静沈着に嘘を暴き、圧倒的な気迫で岩崎千桂を退けるのを、ずっと見ていた。

その瞬間、彼は認めざるを得なかった。沈川澪は...

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