第72章

だが今ならわかる。それは藤原一族が彼女を縛り付けるための、ただの枷に過ぎないのだと。

「お義母さん、ご心配なく。わかっていますから」沈川澪は顔を上げ、完璧なまでに穏やかな笑みを浮かべた。「彼を責めたりはしません」

――もう、そうする価値すらないのだから。

藤原美和はその物分かりのよさに、満足げに微笑んだ。

「いい子ね。あなたがそう言ってくれるなら安心だわ。もう遅いから、私はこれで失礼するわね。早く休みなさい。司が帰ってきたら、私からきつく叱っておくから」

藤原美和を見送ると、マンションの部屋は再び死んだような静寂に包まれた。

沈川澪はローテーブルに積まれた高価な品の数々を一瞥し、...

ログインして続きを読む