第74章

沈川澪は鏡を見つめた。そこに映る自分の顔には、少しずつ生気が戻ってきている。ようやく、心からの笑みが唇の端に浮かんだ。

「ええ、今日退職手続きをしてくるわ」

『おめでとう、沈川デザイナー』神崎湊がくすりと笑う。

通話を切ると、沈川澪はすぐさま車を走らせ、藤原グループの本社へと向かった。

自分の所属部署には寄らず、エレベーターで直接最上階へ上がる。

会長室。

マホガニーの執務机越しに書類へ目を通していた藤原陽は、沈川澪が入ってくるのを見ると、その威厳ある顔にわずかな温もりを滲ませた。

「澪か。司は出張中だが、あいつに何か用事かな?」

沈川澪は進み出ると、封がされた書類を両手で差...

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