第8章

『藤原社長』と連呼し、『公私混同は避けるべき』と繰り返す彼女の言葉は、まるで鋭利な彫刻刀のように、二人の間にわずかに残っていた情を削り取っていく。その徹底した理知とよそよそしさは、どんなにヒステリックな口論よりも、藤原司の怒りを煽り、理性を失わせるものだった。

彼は鼻で笑うと、ゆったりとした革張りの椅子に深く腰を下ろし、いつもの見下すような態度に戻った。

「君の退職願は却下だ。俺が離婚に同意しない限り、君は依然として俺の首席秘書だ。出て行け」

沈川澪はそれ以上何も言わず、背を向けて執務室を出ていった。

ドアが閉まった瞬間、藤原司は内線電話を掴み取った。その声は水が滴り落ちそうなほど陰...

ログインして続きを読む