第81章

すべてを掌握しているかのようなその揺るぎない自信に、かつての彼女は炎に惹かれる蛾のように深く溺れていた。

だが今、彼を見つめる彼女の心臓は一瞬跳ねたものの、理性は氷水を頭から浴びたように冷え切っていた。

この男がどれほど魅力的であろうと、自分のものにはならないのだ。

帰宅したときには、すでに夜も更けていた。

沈川澪は靴を脱ぎ、コートを脱いで水を飲もうとしたそのとき、背中にふわりと温かい胸板が密着した。

藤原司が背後から彼女の腰に腕を回し、その顎をそっと首筋に乗せてきたのだ。

「澪」

低く呼ぶその声には、警戒を解いた疲労感と、珍しいほどの温もりが滲んでいた。

彼は腕に力を込め、...

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