第91章

彼女は少しの躊躇いもなく、あっけらかんと言い切った。

「もうとっくに吹っ切れてるわ。すれ違うだけの他人以下の存在に、感情を浪費する価値なんてないもの」

その潔い答えを聞いて、神崎湊は密かに抱えていた胸のつかえがようやく取れるのを感じた。

穏やかな目元が和らぎ、口元に微かな笑みが浮かぶ。

「それならよかった」と神崎湊は小さく頷き、ふと真面目な顔つきになって声を落とした。「実は……今日は、見苦しいところを見せてしまったね」

沈川澪は少し姿勢を正した。

「話す気があるなら、聞き役くらいにはなれるわよ」

神崎湊は前方の点滅する信号機を見つめた。その瞳はどこか遠くを彷徨い、思考は数年前へ...

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