第6章
「お二人とも、サイズは別々のものが必要ですか?」
店員が、お揃いのデザインのファイルを手に取って尋ねる。
星奈が、悪戯っぽく笑った。
「実は、本当の娘は私の方なんです」
店員は一瞬、混乱した表情を浮かべ、それから気まずそうな、哀れむような笑みを私に向けた。
『見ず知らずの他人にまで、今の私の惨めな立場がバレてる』
私たちは、星奈にとって初めてとなる日本の学校生活のために、新学期の買い物をしていた。お母さんとお父さんは、彼女が指さすものすべてを、ホイホイと買い物かごに入れていく。真新しいリュックサック、高級なシステム手帳、私が一度もねだって許されなかった、ブランド物の学用品...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章

4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章


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