第104章 兄は不機嫌

前科というものは、人生において決して消えない汚点だ。

 ましてや、その罪状が「強姦」となれば尚更である。

 真相など誰も気にしない。ただ一目見ただけで、彼は恥辱の柱に打ち付けられることになる。

 さすがの古狸、九条震霆もこの時ばかりは目を細め、彼の背後に控える高杉蓮も驚きを隠せない様子だった。

 高杉蓮は秋月雫を見つめた。なぜ彼女がそんなことを言い出したのか理解できないといった風情でありながら、その瞳には明らかな哀れみが混じっているようにも見えた。

 彼らの動揺とは対照的に、秋月雫の表情は微動だにしない。それどころか、薄い笑みさえ浮かべていた。

「お義父様、あなたなら私よりよくご...

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