第134章 決して誰の身代わりではない

九条時夜が社にいる間、その機嫌は底なしに悪く、社長室一帯の空気は重く澱んでいた。

 書類を届けに入れば最後、些細なミス一つでも針小棒大に取り上げられ、完膚なきまでに罵倒されるのだ。

 二度ほどそんなことが続き、もはや誰も社長室へ足を踏み入れようとはしなくなった。

 アシスタントの青年はファイルを抱え、加賀和成に泣きついた。

「加賀さん、なんとかしてくださいよ。このままじゃ皆、胃に穴が空きます。まだ九条社長に決裁をもらわなきゃいけない書類が何通もあるのに」

 加賀とて頭を抱えたいのは同じだった。

 彼の手元にも、九条時夜に見せなければならない企画案が二つある。書類の決裁以上に粗探し...

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