第146章 まさか彼は本当に秋月雫に惹かれたのか?

九条時夜の足がもつれた。誰かに支えられなければ、その場にへたり込んでいただろう。

 普段は氷のように冷徹な瞳の奥に、亀裂が走る。

 彼の声は、微かに震えていた。

「な……今、何と言った?」

 選ばれし者として、人前では常に余裕と威厳を崩さない彼が、これほどまでに取り乱す姿を誰が想像できただろうか。

 周囲に集まっていたのは彼と親しい者ばかりだったため、その異変は誰の目にも明らかだった。

「時夜」

 成田博司は異様な空気を感じ取りながらも、意を決して口を開いた。

「あの女はもともとお前にしつこく付きまとっていただけだろう。死んだなら死んだで、それまでのことだ。今日は白川ゆらさん...

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