第166章 彼女を娶らないなら、なぜ婚約したのか?

「いいわ。じゃあ九条社長、ドアを開けてくださる?」

 秋月雫があっさりと承諾したことに、九条時夜は明らかに虚を突かれたようだった。

「なに? 惜しくなった?」

「まさか」

 彼は身を翻してドアを開けた。秋月雫はプレゼントを放り込み、二人の子供を一人ずつ抱き上げて座席に座らせる。

 最後に彼の手から車のキーを受け取ると、目の前で軽く振ってみせた。

「九条社長、バイバイ」

 そう言い捨てると、彼女はさっさと運転席に乗り込んだ。その動作は無駄がなく、鮮やかですらある。

 すべてが当たり前であるかのように。

「待て」

 閉まりかけたドアを九条時夜が手で制し、彼女を見下ろした。

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