第176章 もっと酷いことをさせないで

その言葉の数々は、まるで平手打ちの連打のように九条時夜を打ち据えた。

 普段は冷徹で高貴な彼の顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。

 それは怒りによるものではない。心の奥底に巣食う悪夢がもたらした色だった。

「君は……俺をそんなふうに思っていたのか?」

「思っていたわけじゃない。あなたがそうしてきたのよ」

 秋月雫の瞳は灼熱の光を帯びて彼を見据え、微塵も揺らがなかった。

「結局あなたは、誰が傍にいようと気にも留めない。そうでしょ?」

 言葉のナイフが、心臓を深々と突き刺す。

 時夜の顔色は、赤から一転して蒼白になった。

「説明させてくれ……」

 そう言いかけた時、病室の...

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