第191章 彼女は秋月雫には譲らない

「秋月雫!」

 二つの声が同時に重なった。

 白川ゆらは笑みを浮かべて口を開く。

「せっかく来たのに、そんなに急いで帰ることないじゃない? 久しぶりなんだから、他人行儀になるのも無理ないけど」

 対照的に、緒方ハルは目を見開き、掠れた声を絞り出した。

「あなた……全部話してしまったの?」

「ママ、こういうことは隠しちゃだめよ。時間が経てば経つほど、溝が深まるだけなんだから」

 白川ゆらが手を振ると、使用人たちは心得たようにその場を離れていった。

 すぐにロビーには、秋月雫と緒方ハル、そして白川ゆらの三人だけが残された。

「ママ、昨日はあんなに心を痛めていたじゃない。なのにど...

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