第204章 彼女は九条時夜と仲直りしない

「白川ゆらのために、身を引くというの?」

 秋月雫はふっと笑い、首を横に振った。

「どうしてそんなふうに思うの? 最初から最後まで、九条時夜が求めていたのは私じゃない。白川ゆらだったのよ」

「彼が私を妻にしたのは、単に私が白川ゆらに少し似ていたから」

「彼の目には、私はただの身代わりにしか映っていなかった」

 かつては身が引き裂かれるほど辛かった事実も、今の彼女は淡々と口にすることができた。

 あるいは、緒方ハルの崩壊した人生に比べれば、自分の過去など大したことではないと思えたのかもしれない。

 所詮は、叶わぬ恋だったというだけのことだ。

 緒方ハルは眉をひそめた。どうやら、...

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