第226章 偽りの婚約

秋月雫は眉を顰め、九条時夜のスーツを押し退けようともがく。

 だが、彼は襟元を掴むと、彼女の体を強引に懐へと抱き寄せた。

「さっきホテルの入り口にいた記者は、まだ帰っていないはずだ。一緒に行って挨拶でもするか?」

「あなた……!」

 彼女の抗議がましい視線を受け、彼は口元を緩める。

「このまま立ち話を続ければ、勘のいい連中が駐車場に回ってくるだろうな」

 世の中には小賢しい人間が多い。ましてやスクープを狙うハイエナのようなパパラッチなら尚更だ。

 雫は忌々しげに彼を睨みつけ、何か言おうとした矢先、視界の端に白川ゆらの姿を捉えた。

 白川ゆらは怒りを露わにし、拳を震わせているが...

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