第272章 私と一緒に九条家へ帰ろう

「だめ!」

 秋月雫は考える間もなく拒絶した。

 だが、その言葉が口をついて出た途端、周囲の空気は凍りついたように重くなり、彼女自身も気まずさを覚えた。

 小さく咳払いをして、口を開く。

「私を助けようとしてくれているのはわかるわ。でも、それではあなたに不公平よ」

 過去のことなど、彼女はもう持ち出したくなかった。

 当時彼に嫁いだのは彼女の強引な願いのせいであり、彼は最初から最後まで彼女を愛してはいなかったのだ。

 だからこそ、彼が自分を蔑ろにし、すべての愛情を他の女に注いだのも当然の報いだった。

「不公平?」

 九条時夜は秋月雫の内心に気づかぬまま、ただその双眸で彼女の...

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