第276章 私が枕営業を迫るのが怖い?

「俺の存在は、君にとってそこまで後悔するようなものだったのか?」

 九条時夜の声が背後から聞こえた瞬間、秋月雫の指先がぴたりと強張った。

 だがそれも一瞬のこと、彼女はすぐに普段の落ち着きを取り戻す。

「他に何があるの? まさか、私たちが一緒にいた頃、自分は立派な夫だったとでも言いたいの?」

 三年の結婚生活。記念日や誕生日、あらゆる行事を彼は何度すっぽかしてきたか。彼自身でさえ覚えていないだろう。

 彼の薄い唇がゆっくりと一文字に結ばれた。その瞳には激しい感情が渦巻いており、彼女に触れようと手を伸ばしかけたものの、空中で止まったまま、どうしても下ろすことができなかった。

 雫の...

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