第320章 陥れる

秋月雫はふと動きを止めた。まさか、本当に白川ゆらの腹部に傷跡があるとは思ってもみなかったのだ。

「何を見ているの?」

 視線に気づいた白川ゆらは、たちまち不機嫌な顔になった。

「あなたたち、最低限の職業倫理もないわけ? そんなにジロジロ見て」

「失礼いたしました」

 秋月雫は視線を外し、少し声を潜めて言った。

「ただ、この傷跡が少々気になりまして」

「ああ、これね。昔、人を助けた時にできた傷よ」

 以前、九条時夜が命を狙われた際、身を呈して彼を庇ったのは秋月雫のはずである。ならば、白川ゆらの腹部にあるこの傷跡は一体どういうことなのだろうか。

 秋月雫は微かに眉をひそめた。そ...

ログインして続きを読む