第328章 父不詳の子供

緒方ハル。

 秋月雫の体が、びくりと強張った。

 彼女が帰国した理由は、他でもない緒方ハルのためだった。だが、まさか血の繋がりが愛情よりもさらに残酷なものだとは、誰が想像できただろうか。

 少なくとも九条時夜は、ただ彼女を愛していなかっただけだ。だが緒方ハルは、どちらも自分の娘だと言いながら、事あるごとに秋月雫に白川ゆらへ道を譲るよう強いてきたのだ。

 伏せていた瞳を上げ、止めていた足を再び前へと進める。

 親情などとうに壊れている。今さら振り返る必要がどこにあるというのか。

 秋月雫が立ち止まらずに歩き続けるのを見て、白川ゆらの胸の内にあった優越感は瞬時に消え失せた。

「秋月...

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