第86章 俺と彼女は本当に何もない

九条時夜の灼熱の吐息が降り注いできた瞬間、秋月雫の思考は一瞬にして空白に染まった。

夫婦でありながら、この三年間で肌を重ねた回数は片手で数えるほど。それも、純粋な愛によるものではなく、常に何らかの「アクシデント」が絡んでいた。

彼が泥酔していたか、あるいは誰かの策略に嵌められたか。

皮肉なことに、彼女が離婚を切り出してからのほうが、彼は頻繁に口づけを求めてくるようになった。ただ、そのキスは——

恋人同士の甘やかな触れ合いなどではない。それはまるで、所有物に対する独占欲の誇示だった。

怒りが胸の奥から湧き上がり、雫は勢いよく彼の唇を噛んだ。

彼は痛みに呻き声を漏らし、わ...

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