第99章 私は彼の妻

九条時夜が自分を冷遇していることは、誰よりも彼女自身が一番よくわかっている。

 けれど、彼が時折見せる優しさに、心はどうしようもなく惹かれてしまうのだ。ましてや彼が今、意識不明の重体に陥っているのは、彼女のためなのだから。

 彼が脚光を浴びている時ならば、秋月雫は静かに舞台を降りることもできただろう。

 だが、彼が孤独で頼る者もいない時に見捨てることなど、決してできない。

 とはいえ、傷ついた如月海の姿を見るのは心苦しかった。

 優柔不断は災いのもとだ。

 彼女は深く息を吸い込み、顔を上げて如月海の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「如月海、私がどれほど研究を愛していたか、あなたは知っ...

ログインして続きを読む