第10話

胃の奥が津波のように荒れ狂い、灼熱感が押し寄せる。晴美は血が滲むほど唇を噛み、椅子の背にすがりついて、どうにか意識を保っていた。

和也が葵を庇うようにして去っていく背中を見つめ、深く息を吸い込む。込み上げる涙を、無理やり奥底へ押し込めた。

「どうした?」電話を終えて戻ってきた司が、異変に気づいて声をかける。

晴美は首を振り、かつてないほど強い光を瞳に宿した。

「大丈夫です。九条さん、今回のディベート大会、全力で臨みます」

論文は盗めても、頭の中に刻み込まれた法学の素養と瞬発力までは奪えない。実力で、あの泥棒の化けの皮を剥いでみせる。

……

それからの数日、晴美は事務所に泊まり込...

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