第百零章

「きゃああっ」

人気のない廊下に、遠くから悲鳴が響き渡った。

晴美の心臓が大きく跳ねる。次の瞬間、和也は身を翻して駆け出していた。

あっという間に、その長身は角の向こうへ消えてしまう。

立て続けに、今度は男のくぐもった叫び声が上がった。

晴美も無意識に後を追い、ある控え室の前に辿り着く。中を覗き込んだ途端、瞳孔が急激に収縮した。

殺風景な室内。

顔面を血に染めた男が、床に這いつくばっている。

そして和也は、その男の背に片足を乗せ、怯えきった視線を浴びながら容赦なく拳を振り下ろした。

鈍い音が響く。男は血を吐き出し、白い歯が一本、床を転がった。

和也が再び拳を振り上げたとき...

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