第105章

「今年は負けたけど、来年はまた挑戦するから」

何年経っても、悠は晴美のあの強情な瞳を忘れられずにいた。

負けたのに。それも完膚なきまでに打ちのめされたというのに、晴美は決して諦めなかった。

賞金を手に入れることが彼女の執念になっていた。毎日家に帰るなり、古びたピアノの前に座り、昼夜を問わず練習に打ち込んだ。

指導者がいなければ、ネットの動画講座を食い入るように見た。

他の曲には目もくれず、ただひたすらにコンクールの課題曲だけを弾き続けた。

努力は裏切らない。翌年のピアノコンクールで、晴美が本当に優勝して賞金を勝ち取るとは、誰一人として予想していなかった。

そしてそのコンクールを...

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