第百八章

タッタッタッ。

慌ただしい足音が近づいてくる。

晴美は和也が駆け寄ってくるのを見て、慌てて声を潜めた。

「私の病状はご存じの通りです。誰にも知られたくありません。どうか秘密にしてください」

主治医は晴美を冷ややかに一瞥したが、結局何も言わずに背を向けて立ち去った。

救急救命室の前。

額に汗を滲ませて駆けつけた和也は、深い瞳に心配の色を浮かべていた。

「状態はどうなんだ?」

「現在、医師が救命処置を行っております」老執事の態度は、和也に対していくぶん冷ややかだった。

心の中に不満を抱え込んでいるのは明らかだ。

和也は腹を立てることもない。

無理もないと分かっていた。老執事...

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