第29章

周囲は静まり返り、針の落ちる音すら聞こえそうだった。

呆然としていた晴美は、しばらくしてようやく我に返り、口を開いて弁解しようとした。

だが、それより先に男の冷たい声が響く。

「今日はそんな気分じゃない」

向かいのソファで脚を組み、全身から人を寄せ付けないオーラを放っている。

晴美は目を丸くした。頭が追いつかず、ハッとしたときには、男はすでに背を向けて階段を上がり、書斎へと消えていた。

そんな気分じゃないって、何?

彼女はその背中に向かって、見えない拳を振り回す。

ふとスマホの日付を見て、思わず額に手を当てた。

世の中、こんな皮肉な偶然があるだろうか。

結婚して以来、家中...

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