第35章

屋上。吹き荒れる強風に、服がバタバタと激しく煽られる。

あっという間に髪をボサボサにされた葵は、露骨に不満げな顔をしていた。

地べたに座り込んだ晴美は、バッグからペンを一本取り出すと、烏の濡れ羽色のような長い髪を無造作にまとめ上げた。

「さあ、話し合いましょう。そちらの条件には、できる限り応じるわ」

「本当か?」

妊婦は口を開かなかったが、男の方は目を輝かせ、瞬きもせずに和也を見つめながら、無意識に二歩前へ出た。

「俺たちは今回、子どもを一人失ったんだ。金だ、大金をもらわなきゃ、この損失は埋め合わせられない」

その姿は、頭の中が金でいっぱいの卑しい小悪党そのものだった。

葵は...

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