第64章

まさか、彼が助けてくれるなんて。

体勢を立て直し、晴美は驚愕に満ちた顔で彼を見つめた。

その細く長い指は、まだ彼女の腕を掴んだままだ。

薄い生地越しに伝わってくる掌の温度が、やけに温かい。

和也は暗い瞳を向け、眉間に深い皺を寄せながら身を屈めた。

彼の意図に気づいた瞬間、晴美の心臓が大きく跳ねた。無意識のうちに彼を突き飛ばし、慌てて屈み込むと、床に落ちた薬瓶を拾い上げ、鞄の中に押し込む。

その一連の動作は、驚くほど素早かった。

誰かに奪われまいと必死になっているかのようだ。

「何だ」

和也は鞄をじっと見つめ、冷淡な顔に珍しく怪訝な色を浮かべている。

晴美は身体を強張らせ、...

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