第76章

一時間後、晴美は再び会社に到着し、深く息を吸い込んだ。

「ここで待ってて。私、一人で行ってくるから」

この会社でまたどんな屈辱を受けるかわからない。親友にまで惨めな思いをさせたくなかった。

梨乃を車に残し、晴美はたった一人でオフィスビルへと足を踏み入れた。

和也の助手は晴美の姿を認めると、あからさまに驚いた顔をした。

「どうしてここへ?」

離婚騒動の最中ではないのか。家出までしておいて、今さら何をしに来たというのか。突然押しかけてきて、何か企んでいるに違いない。

晴美に対する態度に敬意の欠片もなく、彼はあからさまに嫌悪の表情を浮かべた。

「いいですか、社長はこの後ご予定があり...

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