第5章

結菜の視点

 あれから三年が経った。

 B市のブドウ園に立ち、ハサミを握って枯れたツルをパチンと切り落とした。肩には暖かな陽射しが降り注ぎ、海風が潮の香りを運んでくる。

「お母さん!」

 二歳になった聡が走ってきた。ぽっちゃりとした小さな手には青いブドウの房が握られ、ダークブラウンのくせ毛が太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。

「見て!」

 聡は顔を仰ぎ向け、目を輝かせた――その瞳は、崇勝と瓜二つだった。

 胸の奥がチクリと痛んだ。それでも私は微笑みながらしゃがみ込む。

「まだ熟してないわよ。秋になるまで待たないとね」

「あきって、いつ?」

 小首を傾げて尋ねる聡。

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