第65話

もう留まる必要はなかった。

階下に降りると、里奈がキッチンを仕上げると言った。私は任せ―そしてリビングで彼を見て足を止めた。

ソファに座り、新聞を広げ、まるで普通の夜のように。

彼の目が私に向き、冷たく読めないまま、すぐに紙へ戻った。

昔の私なら、それでも彼の隣に座っただろう。沈黙でも存在を感じるために。言葉がなくても、何かを信じるために。

だが今は違う。

瑠美の声が鋭く響いた。「彼に借りはない。」

私は背を向け、階段を上がった。

彼が追ってくると思った。丈と一緒に恵真に立ち向かったことを責めると思った。

だが来なかった。その沈黙が―逆に不安を呼んだ。

考え続けていると、莉...

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