第116章

 以前なら、空野朱音にこんなことを言われたら、きっと情けなくなるほど心が揺れていた。

 だが今日は違う。空野家が宮沢お母さんにした仕打ちを思い出した瞬間、胸の奥から込み上げる嫌悪が頂点まで跳ね上がった。

 とりわけ、空野朱音のあの白々しい態度。

 俺が撮ってきた映画に出てくる、いわゆる「ぶりっ子で善人面の当て馬女」を連想させて、余計に癇に障る。

 俺は顎をわずかに上げ、硬い視線で空野家の三人を順に見回した。

 少し間を置いて、朱音に言い放つ。

「俺に顔を立てろって? じゃあお前ら空野家は、森原覚の顔を立てたことが一度でもあるのか」

「覚、何を言ってるんだ」

 空野正人が焦った...

ログインして続きを読む