第129章

オフィスで仕事をしていた社員たちは、「誰かがコーヒーを奢ってくれるらしい」と耳にした途端、ぱっと目の色を変えた。

手を止め、配達員の前へぞろぞろと集まっていく。

「えっと……誰が私たちにコーヒーを?」

部下のひとりが尋ねると、配達員は顎をしゃくって答えた。

「匿名です。ネット注文なんで、こっちも誰が奢ったのかはわかりません」

「まあまあ、コーヒーあるなら受け取ってくださいよ。これ、けっこう高いんですから。まだ熱いし、早く飲んで飲んで」

配達員は手際よく、次々とカップを配り始めた。

そこへ小村が歩み寄ってくる。デザイン会社の部長として、彼女は責任感が強い。

小村は配達員の手を制...

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