第16章

 本当は、あっちへ行く気なんてなかった。だが、空野朱音に腕を引かれては、無視もできない。

 俺は芸能人だ。ファンの目も多い。空野朱音とあんなふうに揉み合っているところでも見られたら、また余計な騒ぎを起こしかねない。

 顔を隠すようにマスクをきちんと直し、俺は空野朱音に連れられて、宮沢詩音と一緒にいる男の前まで行った。

 俺たちが近づくのを見るなり、宮沢詩音の表情がわずかに強張る。

 その顔が妙に、叱られるのを待つ小学生みたいに見えて、少し可笑しかった。

 俺たちの姿を認めると、宮沢詩音はどこかぎこちなく立ち上がった。

 空野朱音は、朝に宮沢詩音から冷たく返されたことなど気にもして...

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