第165章

 相手は他でもない、周防明広の母親――小山おばさんだった。

 その隣には、流行りの服を着こなした小柄な女の子が立っている。見覚えがある。たしか周防明広のアシスタントで、名前は黄前桜――だったはずだ。

 私が姿を見せると、黄前桜はすっと身をかがめ、小山おばさんに何事か耳打ちした。

 次の瞬間、どこかぼんやりしていた小山おばさんの視線が私に向く。私を認めた途端、その目がぱっと明るくなった。

『詩音……』

 親しげに、熱を含んだ声で私の名を呼ぶ。

『小山おばさん、どうしてここに?』

 私は駆け寄り、声をかけた。

 小山おばさんは体が弱く、ずっと病院で療養していたはずだ。母が足を骨折...

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