第170章

森原覚視点

 宮沢詩音が妊娠して、もう1か月ちょっとになる。

 いい歳した男のくせに、妊婦がどんなふうに日々を過ごして、体がどう変わっていくのか――俺は何ひとつ知らなかった。

 撮影の現場で妊婦役の女優や、そういう設定のシーンに触れたことはある。けれど、ドラマの中身なんて所詮は作り物だ。現実の痛みも不安も、画面越しじゃ伝わってこない。

 葉山瑞が提案してきた。

 詩音を連れて、妊産婦向けの講習に参加してみろ、と。

 知識も増えるし、夫婦の距離も縮まる。たしかに理屈としては正しい。俺も、詩音のことを「ちゃんと支えられる夫」になりたかった。

 ただ――まさか、そこで高校時代の同級生...

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