第175章

 もがいても、今のこの身体は、まるで自分のものじゃない。指先ひとつ、思うように動かせなかった。

 空野朱音に腕を引きずられ、二階の寝室へ連れて行かれそうになった、そのとき。

 空野正人の声が、いきなり廊下に響いた。

「母さん……兄貴と兄嫁の件、いったいどういうことだ? あの事故、母さんが仕組んだのか?」

「それと空野藍は……どうして死んだ。ちゃんと説明しろ」

 次の瞬間、空野奥様が冷ややかに言い返す。

「今、それを聞く場面?」

「それより正人。さっさと朱音を手伝って、森原覚を二階へ運びなさい」

「空野家の利益を最優先に考えなさい。今日、朱音と森原覚が関係を持てば――森原家を握...

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