第179章

 ――小山おばさん……。

 彼女は足を引きずるようにして扉を押し開け、手には鉄の棒を握っていた。私の姿を認めた瞬間、その目がふっと宙を漂う。焦点が合っていない。

「小山おばさん……」

 思わず呼びかけると、彼女の瞳の奥に、かすかな光が走った。

 返事をしようとした、その刹那――黄前桜が勢いよく駆け寄り、彼女の腕にすがりつく。

 そして、まくし立てるように言い始めた。

「おばさん、来てくれたんだね……ほら、周防明広をあんな目に遭わせた張本人、連れてきたよ」

「もうすぐおばさん、ちゃんと仕返しできるよ。おばさん知らないでしょ、周防明広、刑務所でね、みんなに殴られてるんだよ」

「寝...

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