第185章

 私はただ、行き先も決めないまま街を歩いていた。雨はさっきより強くなっていて、帰宅を急ぐ人たちが、びしょ濡れの私を見ては好奇の視線を投げてくる。

 体はふらふらで、でもそれ以上に胸が痛い。

 この冷たい雨に打たれている間だけ、心の痛みが少し薄まる気がした。

 一歩、また一歩。目的なんてない。

 大きな橋へ差しかかろうとした、そのとき。

 背後から、エンジン音が唸りを上げて近づいてきた。振り返ると、飛ぶように走ってきた高級車のヘッドライトが、ちょうど私の体を白く照らしていた。

 次の瞬間、車のドアが乱暴に開き、森原覚が焦った様子で飛び出してくる。

 彼の姿を見た途端、頭の奥に、あ...

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