第28章

 宮沢詩音が俺と寝床を分けると言い出した瞬間、胸の奥でかっと火が上がった。

 あいつは俺の妻だ。たとえ契約だとしても、俺の隣で眠る義務くらいある。別々に寝るというなら、せめて納得できる理由を寄越すべきだろう。

 俺は詩音の腕を掴み、低く問うた。

「なんでだ」

 詩音は傷の残る顔をこちらへ向け、淡々と言う。

「別に。ただ、空野朱音が戻ってきたから」

「あなたが本当に愛してるのは、空野朱音さんなんでしょ。車の中でこそこそキスなんてしてるくらいなら、いっそ早く私と離婚したほうがいいわ。そうすれば、あなたたちも堂々としていられる」

「自分の立場くらい、ちゃんとわかってる。しょせん私は契...

ログインして続きを読む