第36章

 私の言い返しがよほど堪えたのだろう。さっき私のカクテルを横取りした金髪男は、みるみる顔をどす黒くしていった。

 空野朱音の口から「ただの世話係」とでも吹き込まれていたはずの私が、まさかこんなにも露骨に、周防家の見栄をひっぺがすとは思ってもいなかったのだろう。

 それにきっと、もっと不可解だったはずだ。

 界隈じゃ名の知れた御曹司である自分の家が、商売で行き詰まっていることを、どうして「世話係」にすぎない私が知っているのか――と。

 もちろん、そんなことを教えてやるつもりはない。

 森原お婆様は、私が鍼をして差し上げるたび、この街のいわゆる名家の裏事情を、ひとつひとつ摘まみ上げるよ...

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