第40章

 もし――空野朱音がこんなことを言ってきたのが三年前だったなら。俺は彼女のために俳優の道を捨ててでも、皆の前で「彼女は俺の恋人です」と宣言できた。

 けれど今は……。

 これからの仕事の幅がどうこう以前に、何より俺はもう既婚者だ。

 たとえ宮沢詩音との結婚が、契約だけの形だけのものだとしても。

 声の調子を落とし、俺は言った。

「空野朱音。俺はいま、公の人間だ。言動ひとつで記者に撮られる。こんなことで仕事に傷をつけたくない」

「わかってほしい」

「それから、念のため言っておく。俺たちの恋人関係は、お前が四年前に海外へ行った時点で終わってる。いまの俺たちは――友だちだ」

 言い...

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