第46章

 空野朱音のことを持ち出されなければ、まだよかった。

 でも、その名前が出た瞬間、胸の奥に燻っていた怒りがぶわっと燃え上がって、私は思わず彼を睨みつけた。

 空野朱音が、彼にとっての高嶺の花だってことくらい、知っている。

 ずっと忘れられない、特別な女。そんな相手とあれだけ酒を飲んできて、帰ってきたと思ったら、今度はその女のために私へ文句を言いに来たってわけ?

 ――なら、こっちだってとことん付き合ってやる。

 私はベッドの上で身を起こし、真正面から森原覚を見た。

「ええ。今夜、私はパーティー会場で空野朱音を叩いたわ」

「彼女の肩を持って文句を言いたいなら、どうぞ好きにして」

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