第52章

 続けて、受話器の向こうから口論の声と、殴り合うような物音が飛び込んできた。

 その瞬間、胸がきゅっと縮む。――何が起きたの? 若様、まさか誰かと揉めて……?

 出かけるとき連れていたのは運転手ひとりだけだった。もし本当に喧嘩になっているなら、若様が不利になるかもしれない。

 それに若様は公人だ。殴り合いの映像でも撮られて拡散されたら、今後の仕事に響く。

 いったいどんな相手なら、若様があそこまで理性を失うの?

 だめ、早く若様を見つけないと……。

森原覚視点:

 あの女は、さすがにひどすぎる。

 何十回も電話したのに、全部電源が切れている。

 心配になって、彼女の母親が入...

ログインして続きを読む